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ほめ言葉は「キュート」以外で(下)

kotani, 2004.09.08 19:47 [ Column : ]

(前編からの続き)そういえば、ケンブリッジでまたまたフランス人で40歳位の女性がいた。彼女は映画館を経営していて、世界中の映画を配給のためにいつも見ているらしい。とても綺麗で洗練された人だった。「男と女」 の主人公みたいにシワももちろんあるのに、それを含めて綺麗だった。フランス流アンニュイ感が漂っていた。私がゴダールの映画が好きだと言うと、その人は今の若い子でゴダール好きは珍しい!と言っていたが、本当にその人こそゴダールの映画に出てきそうだった。


 映画関係の仕事が彼女をフランス映画の主人公のようにさせるのか、彼女の雰囲気が映画の仕事を惹きつけるのかと思ってしまうほどのフランス映画そのもののオーラを感じさせる人だった。映画は現実から生まれて、映画は現実に訴えると考えるなら、映画の雰囲気と現実の人間が類似していることも確かに、理にかなっている。

 その人のオーラは、若いから出るオーラじゃなくて、洗練され尽くしたオーラだった。

 ジェーンバーキンみたいな、色々な経験が雰囲気に、にじみ出ているけれど、けして日本で言う熟女ではない、fragile感(繊細性)が残った美しさがあった。きっと、年をとっても感性がvividなのだろう。

 ところで、私が憧れたマダムがもう一人いた。もう、60歳過ぎている彼女はイギリス文学の「love litereture」の授業のクラスメートだった。何でこんなロマンスをとことん議論する授業をとってしまったのか、しかも各国から生徒が集まって、ほぼみんなネイテイヴで学者やその卵ばかり。

 適当に大学時代心理学を勉強したからというだけで、この授業を選択した自分に疑問を感じつつ、詩的な英語を理解する難しさと格闘していた。シェークスピアよりは古典じゃないので易しいが、全て韻を踏む詩で小説が構成されているために、単語のチョイスと使い方が作品によって独特なのだ。だからこそ、文学的な価値があるのだろうが、レベルの低い私のような読者にとっては実に迷惑な読み物だった。

 さらに、内容も「Love among ruins」だけあって、かなり主人公のキャラクターはヘビー級。読むほどに、確かにこういう心理分析が必要なpatientだなと思えてしまう。国が変わっても病んでいる恋愛心理は万国共通らしい。

 彼女は、そんな低級な悩みを抱えている私をよそに、60歳過ぎて、学者じゃないのにこの授業に真剣に取り組んでいて、凄いなあと関心させられてしまうマダムだった。よくよく見るとすっごいオシャレ。ページュのパンツにピンクのニットにグリーンのシルクスカーフを白髪の髪の襟元にあしらっている。しかも、それが様になっているから凄い。

 そして、黙々と病んだ恋を嘆くの主人公の心理描写を、熱心にああでもない、こうでもないと授業で発言している。授業が終わると、彼女はそそくさと教室を後にする。それから、夫と手を繋ぎながらキャンパスを散歩しているのだ。ほんとに、この光景には驚かされた。例のスペイン人の友達に話すと、「世界で最もラッキーな人種ね」っと言っていた。

 そうだろう、60過ぎてこの情熱。でもそうだから、きっと彼女はイギリス文学の病んだ恋愛心理にも興味があるのだろう。自分もロマンスでは現役なのだから。やっぱり、できるならこういう年の取り方をしたいなと思ってしまった。

 綺麗は若作りじゃなくて、経験を積み重ねてもなお存在する、情熱の中に存在するのだ。思わずそう感じてしまった。きっと、綺麗とpassionは相性が良いのだ。

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