iUに「イノベーション思考のインフラ」として、Statistaのグローバルデータベースを導入した理由

Taro Matsumura 松村太郎
@tarosite
Published in
May 15, 2023

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2023年5月15日から、iU(情報経営イノベーション専門職大学)は、ドイツに本社を置くグローバルデータベース企業「Statista」の「Campus Lisense International」を導入しました。全iU学生・教職員は、Statistaが持つ世界190万件以上のデータや、各国、各調査機関の白書、独自の調査レポートにアクセスすることができるようになりました。

プレスリリースでも、授業の活用イメージなど、教員のコメントを詳しく載せています。

Statistaはこちらから。

ググるまえにStatistaというデータ活用

StatistaとiUは2021年から連携企業協定を結び、教育におけるデータの利活用や、データサイエンスを軸にした、起業やオープンイノベーションの加速について、議論を行い、授業としてのインターン(臨地実務実習)の受け入れなど、知識と人材の交流を進めてきました。

話し始めた当時は、Google検索でなかなか見つけられなかったり、結果購入しなければ利用できなかった「データの入手」という悩みを、Statistaで解決することができるのではないか、という期待が大きかったのです。

Statistaの検索画面に例えば「Emoji」(絵文字)というキーワードを入力してみると、絵文字に関する調査データ、統計データが出てきます。

via Statista
via Statista

例えば「2022年上半期に最も使われた絵文字」を調査した内容を開いてみると、「Face with tears and joy(😂)」であったという結果を見つけることができます。

的確なデータに迷わずたどり着ける点が、Statistaを活用する際の大きな魅力になっている、と思います。

ChatGPTを使うようになって、悩みが増えた

2022年から2023年にかけて、生成系AIが盛んに活用されるようになり、学生たちも、授業を受けながらChatGPTに問いかける、という教員とAIの両利きで学習するスタイルが定着しつつあります。教員もそういうプレッシャーの中で喋る必要があるのです。

学生からすれば大きな武器を手に入れたようにみえるChatGPTでしたが、悩みも膨らんでいると言います。特にうちのゼミの学生の最近の結論としては「調べ物には使えない」というものでした。

確かに問いかけに応じて色々と答えてくれるのは便利です。パターンが決まっている物や、その場の言葉の組み合わせなどから作られるフレーズなどは、納得感が強いのも事実でした。

しかしデータやファクトについては、かなり不正確な物が混じっており、結局それを信じて良いのかどうか、という検証をするために、改めてGoogleなどで検索をする必要がでてきていると言います。つまり、二度手間になってしまうことから、ChatGPTでの調べ物に慎重な姿勢にならざるを得ない、ということです。

Googleではデータに行き着くのに時間がかかるという意見からStatistaの有用性を見出していましたが、今度は生成系AIの不正確さに頼らないためにStatistaを使う、という切り口が見出された点は、目から鱗でした。

Statistaを入れた瞬間起きたこと

プレスリリースにも盛りこみましたが、導入して早速役立ったという声が聴かれています。

iUの3年B組のイノベーションプロジェクト(ビジネスプランを作る授業)では現在、沖縄の雑居ビルのリノベーションプランについて考えています。一様に、世界から人を呼び込みたいと考えた学生は、デジタル遊牧民(ノマド)の動向を調べたり、サイクルトラベラーのトレンドを調査したりする際に、早速Statistaのデータベースから情報を発見していました。

自分立ちのグループが取り組もうとしているテーマに可能性はあるのか? あるいはどんな打ち出し方や仕組みを作れば、現在のトレンドを取り込むことができるのか? といった、思いつきをアイデアとして固めていく作業に、Statistaのデータベースを生かしており、「なんとなく」とか「絶対上手くいく」という感覚的な部分を、ファクトで検証する作業をこなしているのだと思うと、なかなか頼もしく感じる次第です。

今後の展開

Statista JapanとiUでは、データサイエンスによってイノベーション教育を加速させるための取り組みを進めており「#iUDataLab」を通じて、その活用方法や事例、授業への取り込み方などを発信していきたいと思っています。

また、今回iUにStatistaを導入するにあたり「イノベーション人材の思考のインフラ」「データサイエンスによるイノベーションの加速」という2つのテーマを掲げています。これらの事例や検証、より深い利活用の方法の開発などに取り組んでいきたいと考えています。

引き続き、Twitterなどで発信していきますし、面白いデータがあれば、こちらでもご紹介していきたいと思います。

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Taro Matsumura 松村太郎
@tarosite

Journalist/author covering tech, edu, and lifestyle. ジャーナリスト・著者。iU 情報経営イノベーション専門職大学専任教員。キャスタリア取締役研究責任者。Tokyo JP✈Berkeley CA http://forks.tokyo/