Teriyaki Sauce、ごめんなさい
5年間の誤解が解けた、という話
米国に渡ってきてからの5年間の疑問が、つい最近解けたので、お詫びも込めて書いておこうと思う。テリヤキソースのこと、誤解していてごめんなさい。
実は米国に渡ってきて初めて入った、家から最も近い和食レストランで食べた「Chiken Teriyaki Teishoku」の味に愕然として以来、アメリカで「Teriyaki」と名の付くあらゆるモノを、これまで避け続けてきた。
メニューの写真を見て、ソースがかかっていそうな場合は、「No Teriyaki Sauce」と注文の時に断ってきた。「Are you sure?」と念押されることもあった。なぜこの日本人は、Teriyaki Chickenをオーダーして、No Teriyakiなんて言うんだろう、と不思議に思ったに違いない。
それでも、熱々のソテーされた肉類に、冷たく甘ったるいどろっとした半透明の液体をかけられたくなかった。照り焼きでなんでこんなに甘ったるいんだろうという疑問と、冷たいタレで冷めてしまう料理への残念な気持ち。
「Teriyaki Sauceをかければ和食!」だなんて思うなよ!と、和食店から足が遠のいていくのであった。
先日、サンフランシスコで間もなく60周年を迎えるKikkoman USAのオフィスにお邪魔する機会があった。そこで、5年間の疑問をぶつけてみた。
「あの、Teriyaki Sauceって…」
すると、長年欧州から米国に至るまで、海外で醤油を広めてきた生粋の日本人から、「おいしいですよ、Teriyaki Sauce」と答えが返ってきた。意外だった。僕はまだ、アメリカでおいしいTeriyakiを食べたことがないのに。
Teriyaki Sauceは、米国で醤油の次に発売された商品で、その歴史は深い。現在では、Teriyaki Takumi Collectionというプレミアム商品も登場しており、その味わいにさらに深みを与えているという。
試しに、Kikkoman Teriyaki Takumi Originalで、ポーク照り焼きを作ってみた。厚切りの豚肉を小一時間、照り焼きソースにつけ込んで、フライパンで焼くだけ。いわゆる普通の照り焼きのタレとして、Takumiにご登場願った次第。
旨い。
え、おいしいじゃないですか。フライパンの上から漂う香ばしい香りに、肉の旨みへの期待感が高まる。豚の脂はより甘味を増しつつも、タレの旨みがきりりと締まる。期待通りのおいしい照り焼きポークのできあがりである。
いやはや、普通においしいタレでした。今度チキンでも試してみて、多分リピーターになると思います。ということは、5年間のトラウマになっていた「Teriyaki」は一体何だったんだろう。
推測だが、まず、Teriyaki Sauceをつけこむタレとしてではなくかけるタレとして使っているため、香ばしさが立たないのではないか。そして考えられるもう一つの可能性は、焼き鳥のタレを使っているのではないか、ということ。
いずれにしても、売られていたTeriyaki Sauceに罪はない。ちゃんとした調理法が伝われば、きっと5年前の悲劇は起きなかったのではないか、とすら思う。
「和食ブーム」ではあるけれど、草の根のJapanese Foodにまで、レシピと味を広めなければ、誤解が文化になってしまうかもしれない。日本人としては、それはできれば避けたいと思っている。